これまでの話のつづきではありますが、これは最近いただいた、ちょっとした質問を受けてのお話です。
「ヴェシカパイシスの十字って、黄金比ではないですよね?」
青い十字部分の「比」です。
ここにあるのはルート3なので(ルート5ではなく)咄嗟に「黄金比ではない」とは答えたのですが、思索をまとめておきます。
上の図は同じ2つの円がお互いの中心が相手の円周上にくるように Be with 交わったときに、その真中に形成される「種子」。「エニアグラムとは何だったのか:ゼロはすべて」この種子とは、この円の重なり合っているアーモンド部分のことをいいます。
「ヴェシカ・パイシス」(ヴェシカ・ピスキス Vesica Piscis)とはまさに魚の浮袋という意味で、中世のキリスト神秘主義においては中心的な図式とされるそうです。ギリシャ語ではイクトゥス。そのカタチからジーザス・フィッシュと呼ばれることもあります。
ちょっと検索してみたら、たくさんの記事がピックアップできました。
どれもかなりはっきりと「ヴェシカパイシスの縦と横の線の比が黄金比になっている」と書いていらっしゃいます。
うーん。
これだけ共通して同じ意見が明示されるということは、かなり影響力のある研究者が文章で言い切っているのではないかな、と思い、まず開いてみたのはこの本です。神聖幾何学に興味を持つ方の多くが読んでいる本といったら、まあ、これでしょう。書斎の本棚にありました。
ドランヴァロ メルキゼデク氏の『フラワー・オブ・ライフ』です。
まず1巻を手に取ると、該当部分はすぐに見つかりました。
メルキゼデク氏によるとこのヴェシカ・パイシスは「神聖幾何学のすべての関係性の中でもっとも重要」とあります。確かにその通りです。
ふむふむ。
生命の木(ツリー・オブ・ライフ)に存在するすべての線は、フラワー・オブ・ライフのヴェシカパイシスの縦か横の長さのどちらかと等しいのです。そして、それらのすべてが黄金比になっています。フラワー・オブ・ライフに重ねられた生命の木を注意深く見ると、どの線も完璧にヴェシカ・パイシスの長さか幅と合致しているのがわかります。これが「大いなる虚空(グレート・ヴォイド)」から出てきた時に見られる、最初の関係性なのです。
P77 『フラワー・オブ・ライフ 第1巻』
ドランヴァロ・メルキゼデク 著 ナチュラルスピリットより
うーん、ここだね。
確かにこの書き方だと、ヴェシカパイシスの十字(縦と横の線)が黄金比である、と読めますね。
しかし、これはどうなんでしょうか?
半径である横線1に対して縦線は √3 です。
求め方はカンタンで「ピタゴラスの定理」を使います。半径を1とすると、ピンクの直角三角形の二辺は1と2です。つまり、ピタゴラスの定理(a2乗+b2乗=c2乗)から、ヴェシカパイシスの横線を半径の1とすると、縦線は√3ということがわかります。
こちらがルートの値です。一番下のφが黄金比。
ヴェシカパイシスの縦線が1.618ならいいのですが、実際には1.732です。
今回、色々と検索していて「フラワーオブライフが黄金比であふれている」的な記載は多々あるんだけど、一体どの辺が黄金比なのだろう?
これは3次元の投影ですから、立体的に考えるとベクトル平衡体になり、正二十面体になり、当然十二面体にもなりますから、黄金比であふれています。けれども、2次元に限ってこの図形を考えた場合はどんな仕組みになっているのでしょう?
フラワー・オブ・ライフと黄金比について詳しい方いたら、この関係(ロゴス)をぜひ教えていただけたら嬉しいです。
後日追記:このような記述を発見しました→ フラワー・オブ・ライフと黄金比
そこで、ヴェシカパイシスにおいてルート5を探してみましょう。
すると、ここに見つかりますね。これもやはり、ピタゴラスの定理から。
あとは有名な正方形から出発する黄金比があります。
正方形の底辺の中心から角に線を引き、その円弧を描くと、黄金比になります。
ついでに、黄金比であふれている五角形・五芒星も探してみましょう。
一応、これまでの話の文脈からも、種子の展開についていえば、コンパスを使って五角形がこんなふうに現れます。円の中心を円周上に置いていきながら描いていきます。だから√3(square root 3)は万物を生み出すのです。この意味において、3はとても重要な数字です。
比(ロゴス)とは、関係をあらわしています。
黄金比の定義は、線分を2つに分割するとき
a : b = b : (a + b) となることです。
つまり、ある線分を2つに分割した場合に、長い線と短い線のロゴス(比)が、全体と長い線のロゴス(比)と等しくなる比率。
これをバッキー(バックミンスター・フラー)的にいえば、
「わたし」か「あなた」の世界から、
「わたし」と「あなた」の世界へのシフトする瞬間。
そのとき「わたし」と「あなた」のロゴス(関係)は黄金比なのです。
これをジャック・ラカン的にいえば、
「わたし」から見た「あなた」のロゴス(関係)が
「私とあなた(全体)」から見た「わたし」のロゴス(関係)に等しい瞬間。
そのとき「わたし」と「あなた」のロゴス(関係)は黄金比なのです。
自分を変える旅から、自分に還る旅へ。