アフターゼロ、時の向こう側。

SF短編の傑作集、岡崎二郎氏の『アフター0』(オーサーズセレクション6「時の向こう側」)には、エスカレーターの上がりと下りで10時間の歪があることを発見した男の話が出てきます。

ある特定の時間ぴったりにエスカレーターに乗ると、あちら側が10時間後であることに氣づいた男は、競馬の結果を書いた紙を持って10時間後に未来側のエスカレーターに乗ろうと決めます。すると、あちら側のエスカレーターに当たり馬券の番号をメモに示した自分自身を発見するのです。

彼はそのまま競馬場へと向かい、エスカレーターに乗る前に決めた計画を成功させます。

それから彼は、10時間後のエスカレーターへ向かって走ります。

未来(あちら側)の自分を見て、過去の自分(こちら側)が選択を変え、

結果、未来の自分(あちら側?)を創りました。

SFでは未来の出来事が過去に影響を及ぼすことがよくあります。

たいていはタイムトラベル的な設定を使っています。

しかし、実はこの構造自体はSFだけの話でもありません。

よく考えてみれば、普段の生活の中では、時間軸は単純に一方通行とはいいきれない部分もあります。なぜなら、僕たちは普段からエスカレーターの向こう側を見た彼のような行動をとっているからです。

それは、未来が原因となって、過去の結果が変わるような設定。

例えば、30分前に待ち合わせの時間に間に合うようにタクシーに乗ったのは、今、待ち合わせに間に合った僕がいるからです。そもそも今ここにいないのなら、タクシーに乗る必要もありませんでしたから。今、ここでコーヒーを飲んでいるからこそ、過去の移動手段を選ぶわけです。

例えば、昨日ネットショップで購入ボタンをクリックしたのは、今、商品を受け取った僕がいるからです。今日こうやって商品を受け取らないとしたら、翌日届けてくれるボタンをクリックしたりはしませんでした。たった今こうして受け取ったからこそ、過去にその手続きをとろうとするわけです。

どうやって時間軸を捉えるか?

未来と過去をつくっているのは、どう理屈をこねくりまわしても

今があるからです。

今がなければ、過去も未来もありません。

今を原点にして、過去と未来を巧妙に創造している自分がいます。

SFショートのお話で、たまたまエスカレーターのこちら側と向こう側の間に時間の歪があったように、僕たちはときどき向こう側を垣間見たりしながら、永遠の今この瞬間を生きています。その向こう側との前後関係をみて、それを未来だといったり、過去だといったり、時間を創造します。

ちょっと立ち止まってみれば、今を過去に置き換えたり、今を未来に置き換えたりしながら、あれこれ考えている自分に氣づくことができるでしょう。

これは原因と結果も同じですね。

自分原点。

どうあっても、世界は今の自分次第だったり、します。

自分を変える旅から、自分に還る旅へ。

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牧野内大史(まきのうち ひろし)作家、コンサルタント。著書に『人生のシフト』(徳間書店から)スピリチュアル翻訳者として著名な山川紘矢さん 亜希子さんご夫妻 あさりみちこさんとのセッション本(ヒカルランドから)や、監修翻訳を担当した『ソウル・オブ・マネー』(リン・ツイスト著)等がある。2014年にIFEC(国際フラワーエッセンス会議)に日本人ゲストとして登壇した。長野市在住。