ほとんどの人間は「何かをすること」が大切だと考えています。
本屋さんの本棚を眺めてみれば、ほとんどの本が「何かをすること」に注目しているでしょう。または「何もしないこと」で、「何かをしようと」してみたり。「何をどのように行うか(行わないか)?」ということが最重要だと思い込んでいます。
そのため、「何かをしようとすること」によって、「今、何が起きているのか」に目が閉ざされています。結果として「何もできない!」という矛盾を抱えてしまうこともあります。
昔、ノーバート・ウィナーという天才数学者がいて、「フィードバック」という概念を提唱しました。この概念は、残念ながら兵器開発の現場で発案され、現在は様々な分野のシステムで活かされています。
技術者はそれまで、すべての状況を3次元的に固定化して考えていたんです。しかし、当然のことですが、実際にはこの世界には時間軸があり、いわば4次元的な時空間(変化)があるわけです。
つまり、世界は常に動いている。
状況と状態はリアルタイムで変わる。
そこで、事前の予測処理に重点を置くことなく、「たった今、起きていること」を観察するため、「フィードバック」をする、というアイデアを発見しました。正確には出力結果から入力につなげ調整させる。変化への対応をフィードバックによって可能にするのです。
考えてみれば、生物にとっては当たり前の仕組みです。
ほとんどの生命体はこのシステムを持っていて、生き残るために環境の変化に対応し、フィードバックから次の行為を調節します。ちょっと机の上のペンに手を延ばすだけでも、無数のフィードバックを使います。あらゆる感覚をオフして何かを実行しようとすれば、何氣ない行為も成功しないことがわかるはずです。
これをロボットを製作するときの単純な仕組みにすれば「センサー」です。
そして「センサー」ってやつは、ネガティブ・フィードバックになりがちです。
そりゃあ、そうでしょう。生き残りのサーモスタットは問題が無ければ、現状維持。あらかじめ設定された範囲外に出たときに「ブッブー!問題発生!」と調整をはじめます。それは目指す方向を指し示すものではなく、そこから外れたことを教えるようになっています。
つまり、センサーは問題を認識したとき、はじめて役立つものなのです。
意識が眠っていると、ここで見えている問題がゴールとして変換されて設定されます。
それらのゴールは、ほとんどの場合、自分以外の他人とか社会といったものを勝手に想定して、設定されたものです。
目の前の障害物を察知して、避けて、自動反応的に同じ場所をグルグルしているのが、お掃除用のロボットと、人間という生き物です。
部屋をきれいにするというゴールはロボットが設定したものではなく、ロボットが存在意義を持つために設定されたゴールです。
ロボットはセンサーの本当の使い方を知りません。
センサーってのは、構造上は自分の外側を感じることはできないものです。すべてのセンサーは自分の内面を感じる機構です。内を観察することで起きているのかを把握しようとするもので、基本的にそれは内観です。
目の前にある望みは、他人が押し付けたものをコピーしただけのものかもしれません。本当の自分は、目がまだ見ず、耳がまだ聞かず、手がまだ触れず、人の心に思い浮かびもしなかったことを求めているのかもしれません。
自分を変える旅から、自分に還る旅へ。