お金と自己表現

世界を美しくする魔法…ある中学校の課題で書かれたプレゼン資料から

本を読まれた方からメールをいただき、その内容が素晴らしかったので……許可をいただいた上でシェアさせてください。

中学2年生の息子さんが『ソウル・オブ・マネー』をとても興味深く読んでくださったそうです。それから、学校の課題でこのようなプレゼン原稿を書いたということで、内容を見せていただきました。

以下、K.Nさんの原稿です。

== ここから ==

「働き方から学ぶ世界を美しくする魔法」

僕の定義する「世界を美しくする魔法」、それは文字通り世界を美しく、また豊かにします。決して物理的に美しくなったり豊かになったりというだけではありません。人の意識から変え、そこから物理的な変化を創るのです。
今日はそれを皆さんに感じていただけたらなと思います。

1  ビジネスの始まり 〜物々交換〜

まず古代の商売について紹介します。
今から4、5千年前の縄文時代、日本列島では既に商売が行われていたと言われています。かと言って現代のような紙幣による商売ではなく、物々交換という形で行われていました。物々交換とは物品と物品を直接的に交換する決済手段のことですが、物々交換の成立にはいくつかの条件があります。まず一つ目にそれぞれの所持している物品と求めている物品が一致していること、二つ目に既に充分以上の量の物品を持っていること、そして三つ目は信頼性があることです。この頃インターネットといったものは勿論なかったので、交換する相手を見つけるのは困難だったそうです。また貨幣などを通さない直接的な交換だったので現代と比べ、これらの条件が重要視されていたと考えられます。こうしたことから商売の始まりとも言える古代の物々交換には次の三つのような特徴が考えられます。一つ目は互いに利益を与えるということ、二つ目は既にある充足を分かち合うということ、三つ目は直接的な交換であるため、これらの特徴が重要視されるということです。これらをまとめると、古代のビジネスは豊かさの分かち合いと言えます。

2 現代のビジネス 〜貨幣経済〜

次に現代のビジネスについて紹介します。
現代のビジネスは古代のビジネスにはなかった貨幣を使う物々交換です。この貨幣によってビジネスは飛躍的に進歩しました。例えば古代のビジネスは直接的な物々交換であることから、それぞれの所持している物品と求めている物品が一致している必要があり、よって交換の相手を見つけるのが困難でした。一方現代のビジネスは貨幣用いた間接的な物々交換であることから、その場で互いが最終的に得たい物品を得られなくも、得た貨幣で後にその物品を得ることができます。よって物々交換をより円滑に行うことができます。こうした現代の物々交換の成立にもいくつかの条件があります。まず一つ目は、売り手は相手の求めている物品を所持していて買い手は相手の求めている金額の貨幣を所持していること、二つ目はその物品が売り手にとって既に足りている、若しくは必要がないものであることです。このように貨幣が物々交換における媒体となることで非常に円滑な物々交換が成立していると言えます。
一方媒体を用いることで間接的になったことによって、具体的な使い道のない、媒体そのものに対する際限のない渇望と獲得、またそれによる分かち合いの軽視が生まれています。これらのことから現代のビジネスには次の三つのような特徴が考えられます。1つ目は互いに利益を与えるということ、二つ目は既にある充足を分かち合うということ、三つ目は間接的な交換であるためこれらの特徴を軽視されるということです。これらをまとめると、現代のビジネスは分かち合いの軽視される過剰な媒体の獲得と言えます。

現代のビジネスと古代のビジネスを比較すると媒体によって間接的になるかそうでないかの違いはありますが、互いに利益を与える、既にある充足を分かち合うという特徴は一致していることから、ビジネスの本質は豊かさの分かち合いと考えられます。

3 媒体の欠乏(1)

今度は媒体、つまり貨幣について考えていきたいと思います。総務省統計局の調査したエンゲル係数、内閣府経済社会総合研究所の調査したGDPと生活満足度、幸福度の日本国内における推移を表したグラフより、これらを見るとGDPの増加、エンゲル係数の低下が大きいことから、日本全体として経済的にかなり進歩しているといえます。一方幸福度及び生活満足度は微減しています。つまり幸福度、生活満足度は経済力に比例しないと考えられます。かと言って貨幣はこの社会においてとても重要であり、また媒体として素晴らしい役割を果たしていることは確かです。よって貨幣を用いるこの経済において媒体との関わり方、ビジネスのあり方が大切なのだと考えます。

4 媒体の欠乏(2)

まず現代のビジネスに視点を置きたいと思います。現代のビジネスはいわば過剰な、際限のない媒体の獲得といえます。僕はその根底には媒体に対する欠乏感があると確信しています。例えば十分に生活できる以上の貨幣を所持しているにもかかわらず、常にお金に対して充足を感じていない人や、既にある身の回りのあたたかな優しい感情に気づけない人が多いように、人々の多くが欠乏感とともに生きていることは明確です。またこうした欠乏感は世界を壊滅に向かわせる歩みとなりかねません。
媒体に対する際限のない欠乏感は、まず僕たちの精神の中の不安や恐怖、ストレスを増幅させます。そして今度はそれらの感情が媒体の欠乏感をさらに増幅させ、「欠乏」の負の連鎖となってしまいます。またそうした「欠乏」の負の連鎖によって、望まない未来につながる現実が創られていきます。

5 媒体の欠乏(3)

今度は原初のビジネスに視点を置きたいと思います。原初のビジネスはいわば豊かさの分かち合いそのものです。この頃の物資は現代と比べると、現代のほうが圧倒的に豊かであることは定かです。しかし原初のビジネスでは現代では成すことの難しい分かち合いのビジネスが成立していました。僕はこの根底には、既にある豊かさに対する充足感があると考えます。決して物量的な豊かさなどではなく、物とのつながりやその存在自体への充足感です。またそうした充足感は世界をさらに豊かにする歩みとなります。
既にある豊かさに対する充足感は、精神の中の感謝や幸福感、希望、愛情を増幅させます。そして今度はそれらの感情が充足感をさらに増幅させ、「充足」の正の連鎖によって、温かな心に満ちた豊かな未来につながる現実が創られていきます。

6 まとめ 〈充足の魔法〉

これまでの1〜5をまとめると四つのことがいえます。一つ目はビジネスの本質的な在り方は豊かさの分かち合いであるということ、二つ目は媒体との関わり方が重要であるということ、三つ目は媒体への欠乏感が負の連鎖を生むということ、四つ目は既にある豊かさに意識を向け、分かち合いの媒体として貨幣を活用することが互いの豊かさとすべての人への資源の分かち合いにつながるということ、つまりビジネスと充足の融合である「充足の魔法」が豊かな未来を創るエネルギーになると考えます。

7 まとめ 〈意識の魔法〉

まず、ハンガープロジェクトの創設当初のメンバーであるリン・トゥイストさんによって執筆された「ソウル・オブ・マネー」より、人は現実の状況に対する自分の思考の中に住んでいるということを強く実感しました。例えば欠乏に意識が向いているときは、様々なものの持ち合わせていない性質や嫌な面ばかりが目に移ります。一方充足に意識が向いているときはそのものの持つ豊かな可能性や素敵な面が世界を彩ります。次に暮らしの中で気づいたことが三つあります。一つ目は何に意識を向けるかによって見える世界が変わるということ、ニつ目は精神状態によって様々なものに対する感じ方が違うということ、三つ目は充足に意識を向けるといろいろな可能性が見えてくるということです。これらのことから、そのものの充足に意識を向けることがその真価と可能性に感謝し、充足感とともにそれらを引き出すことにつながるということ、そうした「意識の魔法」が世界を変化させる無限のパワーになると考えます。

8 まとめ 〈世界を美しくする魔法〉

まず「充足の魔法」は既にある豊かさに意識を向け、媒体として貨幣を活用することによって、互いの豊かさとすべての人への資源の分かち合いを生む、豊かな未来を創るエネルギーです。また、「意識の魔法」はそのものの充足に意識を向けることによってその真価と可能性に感謝し、充足感とともにそれらを引き出す、世界を変化させる無限のパワーです。この二つの魔法、「充足の魔法」、「意識の魔法」の掛け合わせ、それが「世界を美しくする魔法」です。決して難しい魔法ではなく、ただ意識をどこに向けるかということです。僕たちが充足に意識を向け、幸福感のもとで行動することで、世界を変える大魔法が発動します。その魔法は世界を望む形に変化させる無限のパワーであり、世界を美しく彩ります。

〈感想〉

世界は美しさに満ちています。庭の草木や花々、蜜を吸う蝶や雨水で輝く蜘蛛の巣、川や風、大地に満ちた生命、万物の循環、感情の移ろい、命の輝き、愛のつながり、そうした無限の美しさに世界は彩られています。それらは僕たちのすぐそばにあります。少し目を向ければ世界は輝いています。世界は既に満ち足りています。そうした豊かさを誰もが分かち合う世界。それが僕の望む未来です。また僕がインスピレーションを得たリン・トゥイストさんによって執筆された「ソウル・オブ・マネー」は世界中への愛に満ちた素敵な本でした。気になった方はぜひ読んでみてください。

== ここまで ==

欠乏からではなく、充足からお金という媒体に関わっていくということ。

こうしたテーマについて家庭で触れる機会があり、また、それを自分なりに表現する取り組みは素晴らしいと思います。世界は美しさを見ることができる豊かな感性を持った子どもたちが未来を創っていくかと思うと、これからの地球は明るいですね。

素敵なシェアをありがとうございました。

自分を変える旅から、自分に還る旅へ。

ABOUT ME
マッキー
牧野内大史(まきのうち ひろし)作家、コンサルタント。著書に『人生のシフト』(徳間書店から)スピリチュアル翻訳者として著名な山川紘矢さん 亜希子さんご夫妻 あさりみちこさんとのセッション本(ヒカルランドから)や、監修翻訳を担当した『ソウル・オブ・マネー』(リン・ツイスト著)等がある。2014年にIFEC(国際フラワーエッセンス会議)に日本人ゲストとして登壇した。長野市在住。