先日、エジプトのカイロへ。
ギザの大ピラミッドの中に入ってきた。
しかも、テレビ番組『世界ふしぎ発見!』等のナビゲーターや
ナショナルジオグラフィックのエマージング・エクスプローラー。
考古学者の河江肖剰さんのご案内という嬉しい状況。
なんとツアー一行でピラミッドを貸し切り、一般公開されてはいない部屋にも自由に入ることができた。そのため、未知の空間が発見されたことで話題になっている「スキャン・ピラミッド・プロジェクト」で重要なポイント、女王の間に設置されたミューオン透過観測の機材も見させていただくことができた。
紀元前5世紀のヘロドトスの『歴史』にも登場する「クフ王のピラミッド」は、当時ですら建設から2,000年以上が経過していたという。これほど巨大な建造物が4,500年もこの地上に存在している不思議。
ピラミッド内を進むとぽっかり大回廊があり、階段を登って振り返ると目が眩むような巨大空間。
今回、ピラミッドの中に入ったり出たりしながら肉迫して感じられたこと。
随所に 人の手 を感じたことが、とても感慨深いものだった。
削られてできた細かい傷や、使用されることのなかった部屋。計画を柔軟に変更させた跡や、石をひっかけるために設定されたと思われる溝。ここまでは磨かれてつるつるの部分と、ここからは磨かれることのなかったゴツゴツした岩の表面。
細部を見て、その試行錯誤に様々なイメージが拡がる。
ピラミッドの建造方法には諸説あるものの実際に取りかかれば、おおよそ10年という驚くべき短期間で建てられたという。重量を分散させるための切妻構造や、大回廊の持ち送り構造。シリウスなど天空の星を指し示しているシャフト(通氣口)。
三大ピラミッドにはそれぞれの意味があり、それが組み合わさると個々の意味を損ねないままに、さらに大きな意味で再統合される。
象徴的な、技術的な、
人の手による工夫、工夫、工夫……。
誰かがここにいて、自身の仕事をまっとうした。
あちこちを探索している中で、そんな確信がある。
第3ピラミッドを建造したメンカウラー王は「誰も仕事を強制されてはならない。誰もが喜んで仕事をすることを望む」と宣言したという。
昔いわれたように、ピラミッドは奴隷がムチを打たれながら血と涙で造られたのでもなければ、どこからか宇宙人がやってきて安直に一晩で造られたのでもない。多くの人の手をかけ地に足をつけた巨大プロジェクトとして進められた。建造に関わっていた者たちが当時としてはとても豊かな生活をしていたことが食生活の痕跡などからもわかっている。
河江さんが大好きな眺めだという、南の丘にも登った。
三大ピラミッドを見渡すことのできる素晴らしい眺め。
当時の設計者が見たであろう風景から、当時に思いを馳せた。
誰かが自分の人生を過不足なくまっとうした結果が、それから数千年の時を経て。
今、ここにある。
それはとてもなつかしい、じんわりとした不思議な感覚だった。
各地で河江さんの解説もとても素晴らしいもので、古代文明に関わらず研究者の姿勢として、あらためて考えさせられることも多かった。今、思い返してもそうチャンスのない、とても貴重な数日間。
また、幸運にも日本が協力していて建設中の大エジプト博物館。こちらの建築に関わっている方にもお会いでき、朝食をご一緒できた。今年プレオープン、予定では2022年に正式オープン。
(CairoScene.com ツイートより引用 他写真は牧野内のiPhoneにて)
6つのラインがピラミッドを目指す斬新な設計デザイン。
きっと数年後……
また新しい景色を眺めるためにここエジプトを訪れたい。
僕らは時空の旅人。
さあ、次の旅にでかけよう。
自分を変える旅から、自分に還る旅へ。