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第3章 フラットランドの住人

第2章のつづき

フラットランドに住む人々の幅、長さはそちらの単位でだいたい28センチほどだ。30センチ以上もあれば、かなり大きなサイズといえるかな。

フラットランドの女性は、まっすぐな線だ。
兵士や低位労働者は2辺の長さが等しい三角形。

それぞれの辺は28センチ、そして底、というか、3つ目の辺はとても短くて1、2センチほど。彼らの先端はとても尖っていて手強い角度になっている。さらに身分が低い者になると底辺は3ミリ程度になって、その姿は直線、つまりご婦人とほとんど区別はできない。私たちはあなたと同じように、これらの三角形を「二等辺三角形」と呼ぶ。だからこれ以降はその名前を使っておこう。

私たちの世界の中流階級は正三角形だ。

専門階級と紳士階級は正四角形か正五角形。

ちなみに私自身は正四角形、つまりは正方形で、名前もスクエア(正方形)だ。

さらにその高位の階級は貴族階級でこの階級もいくつかに別れている。最初に六角形、さらに辺が増えると「多角形」という称号を得る。辺の数が数え切れないほど大きくて辺の長さがとても短くなると「円」と呼ばれる。この「円」とは「聖職者」という最高位の階級となっている。

私たちの自然法則では息子は父親より辺がひとつ増える。そのため世代を重ねるごとに進化し階級もひとつ上がることになっている。四角形の息子は五角形になり、五角形の息子は六角形になるといった具合だ。

けれども、商人はいつもこの法則通りになるわけではないし、兵士階級や労働者階級ならなおさらだ。彼らはすべての辺の長さが等しいわけではなく、とても人らしい図形とはいえない。だから彼らには自然法則の通りにもならず、二等辺三角形の息子はやはり二等辺三角形のままだ。

とはいえすべての二等辺三角形に望みが無いわけでもない。なぜなら、軍事的成果をあげたり、勤勉で熟練した労働によって、彼らの形は変わることができる。図形の底、つまり3つ目の辺が少しだけ伸びて、他の2つの辺が少し縮むのさ。このような低位階級の中でも知的な者同士が聖職者の取り計らいで結婚すると、たまに正三角形に近い図形で生まれることもある。

膨大な二等辺三角形の誕生数と比べればめったにない、とても珍しいものだけど、二等辺三角形の親から本物の正三角形が生まれることもある。ただし、このような誕生にはそれまでの多くの世代において慎重に結婚相手を選び、二等辺三角形としての知性を伸ばしてきた結果なんだろう。

二等辺三角形の親から本当の正三角形が誕生すると、その辺り一帯は大喜びだ。衛生社会理事会の厳正なる審査を経て、その子どもが正三角形であると認められると、厳粛な儀式をもって正多角形階級に加えられる。そしてすぐ後に、誇らしくも悲しむ両親から引き離されて、子どものない正三角形の養子となる決まりだ。それは進化したばかりの子どもが、無意識に親の真似をすることで、遺伝的なレベルに逆戻りしないための対応だ。

たまに起きるこのような低い階級から正三角形の誕生は、貧しい者たちにとっての希望の光でもある。それだけでなく、これは高位階級にとっても喜ばしいことなのだ。彼らは、このまれな現象が低位階級からの革命が起きることを防ぐための便利な障壁であることを知っている。そして、高位階級ならではの特権を維持させているってわけ。

たとえ、尖った角を持つ大衆が野心や望みをまったく持っていなかったとしてもだ。多くの先導的な反逆者から、ひとりのリーダーを見出し、その数と力によって、円たち高位階級に打ち勝つことができたかもしれない。しかし、低位階級の知性が増すにつれ、彼らの鋭角の角度は大きくなって無害な正三角形に近づいていく。その力を活かす知性が高まるにつれ、もともと持っていた貫通力は弱まってしまう。

これはホントあっぱれな等価交換の法則だね。まるで、このフラットランドの神聖な階級制度を、この自然がぴったりと支持しているようさ。円や多角形はこのような自然法則を巧妙に活用し、抑えがたい希望につけ込むことで、反乱の根を抑えることができている。

最新技術もこの法と秩序のために役立っているのだろう。というのも、国の医師が反逆者の知的なリーダーに対して、辺の人口圧縮や膨張手術を行って、そのまま特権階級に組み込んでしまう。基準を満たない大多数も「もしかしたら、自分も貴族になれるかもしれない」という期待によって国立病院に入れられて、その後の一生を名誉ある監禁生活の中で送るのさ。そうすれば、望みのない不道徳者は残りわずかで、彼らは処刑されてしまう。
 
こうなってしまえば、リーダーも計画も失ったみじめな二等辺三角形たちは、円の長たちが非常時のために雇っていたわずかな仲間たちによって惑わされることになる。または、円たちから嫉妬心や猜疑心をあおられ、内輪もめによって自滅してしまうことも多い。

この国の年代記に記録された反逆事件の数は120を超え、その他にも小さな争いが235も起きたが、その試みのすべてが失敗しているんだ。

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『フラットランド―二次元の世界から多次元の冒険へ』
エドウィン・アボット・アボット(著) 牧野内 大史 (翻訳)

つづく… 第4章 ご婦人についての話

自分を変える旅から、自分に還る旅へ。

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